三線の花
いつしかわすれられた
おじーの かたみの さんせん
床(どこ)のまで たんじょういわいの
しまざけにもたれて
ほこりを ゆびで なでて
ゆるんだ いとを まけば
たいくつで たまらなかった
しまうたが ひびいた
あざやかに よみがえる
あなたとすごしたひびは
やわらかなあいしさで
この むねを
つぎやぶり
さいたのはさんせんのはな
テレビのななめむかいの
あなたがいた ばしょに
すわれば アルミのまどから
ゆうつきがのぼる
かぞくをながめながら
のむさけは
どんなあじ
ねむりに
つくまえの
うたはだれのうた
よろこびもかなしみも
いつのひかうたえるなら
このしまのつちのなか
あきになきふゆにたえ
はるにさく さんしんのはな
いやそそ
いやそそ
しゃにしゃーすん
がまらさーすん
いつぬびなんが
うたいざりかあ
ばがすまぬ
んたぬなか
あきんがなてぃ
ふゆんがたや
はるんがさこぉる
さんしんの花
このそらもあのうみも
なにもかたりはしない
このしまにあたたかな
かぜとなりあめをよび
さいたのは さんしんのはな
秋(あき)になきふゆにたえ
はるにさく さんしんのはな
summary
いつしか忘れられた オジーの形見の三線 床の間で誕生祝いの 島酒にもたれて ほこりを指でなでて ゆるんだ糸を巻けば 退屈でたまらなかった 島唄が響いた 鮮やかによみがえる あなたと過ごした日々は やわらかな愛しさで この胸を突き破り 咲いたのは 三線の花 テレビの斜め向かいの あなたが居た場所に 座ればアルミの窓から 夕月が昇る 家族を眺めながら 飲む酒はどんな味 眠りにつく前の 唄は誰の唄 喜びも悲しみも いつの日か唄えるなら この島の土の中 秋に泣き冬に耐え 春に咲く 三線の花 この空もあの海も 何も語りはしない この島に暖かな 風となり雨を呼び 咲いたのは 三線の花 秋に泣き冬に耐え 春に咲く 三線の花